<2003.7.19> 流れに消えた影
曇り一時雨 強風

サッ! 足元を大物の影がかすめた やはり

あの粘板岩の壁に貼り付いて居たのか?

其れは過去に 多くの大ヤマメが竿を搾った

廊下状の好場所で もう四年を経た今では

土砂が入り 膝丈程の華奢な流れに 姿を

変えて居て 其の上部に壁から張り出した木の

枝が被る様に伸びる為 仕掛けを送り込む事も

難しく思われる。


対岸へと移るべく 流れ込む瀬へと足を踏み

入れた其の時 私の姿に怯え 魚が上流向け

走った!  後続の釣友を制し 其のままの

位置で 左から右へのサイドスローで 逃げ

込む方向へと 振り込んでやる。

クルリ!廻る目印? 緩衝帯から 流れへと

乗る寸前 僅かに止まった  軽く張ってやった

ライン伝いで 魚の息遣いを確認し すかさず

大きく煽り二段合せを呉れた・・・・・・・・・・

ゴン!”よし乗ったぞ” ヤマメは薄暗い谷底を

逃走場所を求め走り回る 下手の釣友へと導き

タモで掬って貰うと それは中々良型のヤマメで

あったが 先程逃げ去った物に比べ 小振りで

おそらくヤツは 上手に見える淵まで逃げ込んだ

ものと思われる。

大物が息を殺し潜むだろう位置は 流が弱まる

発泡下脇? 其処から下り 赤い沈み石辺りで

捕食することになろう。

里川のヤマメ釣場

このサイズ中心

二人で何やら?

身を低く構え寄り出し 一歩刻みでの攻略と掛かる 何投めかの誘いに 沈み石脇で引き込まれる目印!

開けた上空向け 竿を溜めると ブワ〜!と水面に浮いて来た 身悶えするそいつは尺を悠に超えている 

紛れも無い先程の大物だ  ヤツは体側の模様をひけらかし身を捩ると ラインは力無く宙を泳いだ・・・・

無念 掛かり処が悪かったか? 全てのドラマは主を無くし 流水の音に消え去って行った。


四年ぶりの遡行では 記憶に留める姿と随分様相を変えていた 大量の土砂が入った事で あれほど

魅惑的な流れは何とも脆弱な姿に変わってしまい 気が付くと風雨も強まり出し その行く手に現れた

ものは 川底を起こす大掛かりな河川改修工事 多くの重機が目に飛び込む 走り回る重機とダンプの

騒音に 追われる様に久方ぶりの渓を後にした。

                                                      OOZEKI